2025.01.07
閉所恐怖症の事例「トイレに入るのに個室のドアを閉められない」
ある女性患者さんが「恥ずかしいのですが相談したいことがあります」と思い切ったように話し始めました。「トイレのドアを閉めると不安になってしまうので開けたまま(排泄を)しているのです。家以外ではドアを閉めて鍵をかけないといけないのでトイレに行くことができないのです。だからトイレを我慢できる時間しか出かけられないのです。」と話しました。
閉所恐怖症を持つ患者さんは一定時間、外に出られない環境に身をおくことができません。電車や飛行機などの乗り物に乗ることができない、エレベーターに乗ることもできない場合もあります。この患者さんのようにトイレや浴室のドアを閉めることができないという方もあります。このような場合、薬物療法に加えて認知行動療法の曝露療法を行います。
この患者さんはまず3つ数える間だけトイレに入った際にドアを閉めることを試みました。1、2、3と数えたらドアを開けてから排尿します。トイレに行くたびにこれを繰り返していると、だんだん3つ数える間は不安にならなくなってきます。3つが平気になったら次は4まで数えます。そうして1ずつ増やしていきました。10数えられる頃にはドアを閉めて排尿できるようになりました。数が増えない時期や不安がぶり返して数が減ることもありましたが、諦めずに続けました。30まで数えられるようになった時、外出先のトイレも鍵をかけて入ることができました。友だちと遊びに出かけることができ、生活の範囲が広がりました。
閉所恐怖症の治療は時間がかかりますし、根気も必要です。しかし、前向きに取り組めば必ず改善します。勇気を出してまず相談してみてください。